私は、同じクラスの芥川くんが大好きだった。
きっかけは、テニス部の大会を見に行ったときだ。
テニス部は全国大会にも出場する、すごくレベルの高い部で、友達と何度か見に行ったことがあった。
そのとき、芥川くんの自由に見えて、計算されているようなテニススタイル(詳しいことは、よくわらないけれど。)に、惹かれた。
そんな中、2年、3年と同じクラスになれたのは、ちょっと運命かも、なんて思ってしまった。
だけど、教室での芥川くんは、いつも寝てばかりで、あまり話せなくて。とりあえず、芥川くんの寝ていた授業のノートなんかをクラスのみんなで渡そうというときに、私も精一杯頑張ろうなんて、思ってたっけ。
そして、お菓子が好きだという芥川くんに、何度か「食べる?」と話しかけたこともあった。
その最初に渡したのが、運良く芥川くんの好きだという、ムースポッキーだったんだよね。それで、いつも寝ている芥川くんが突然目覚めて・・・。

「俺、これ大好きなんだ!!ありがと、!!」

って、言ってくれたことをよく覚えている。そして、あんなに寝ているのに、クラスメイトの名前はちゃんと覚えてるんだ、と感心したのも、よく覚えている。
そんな小さなきっかけで、芥川くんと何度か話すようになって、いつの間にかすごく親しくなった。

ちゃんは、ポッキーの中で何味が好き?」

親しくなると、芥川くんは下の名前で呼ぶことが多いらしく、私もそう呼ばれるようになっていた。そして、それは逆もまた然り・・・、としたいらしい。芥川くんとしては。

「ねぇ、ちゃんは『ジロー』って呼んでくれないの?」

「その・・・。『芥川くん』の方が呼び慣れてるし・・・ね?」

「でも、俺は『ジロー』って呼ばれることが多いから、そっちの方が呼ばれ慣れてるんだけどなぁー。」

そんな風に可愛く頼まれても、無理なものは無理なんだ・・・!!
親しくなれば、私の想いも少しずつ、恋愛感情になっていくわけで・・・。そんな相手に対して、名前で呼ぶなんて、恥ずかしすぎる・・・!!
そのまま、私は芥川くんと呼び続け・・・。そして、3年になってから1ヵ月後。

ちゃん。俺と付き合ってくれる?」

と芥川くんから告白してもらえた。たしかに親しくなったとは言え、告白されるなんて思ってなかったから、すごく驚いた。
だけど、嬉しいことには変わりなくて、私はこくんと頷いた。
そんなわけで、私の彼氏は芥川くん、という何とも素晴らしい毎日を送っているんだけど。私の呼び方は未だに『芥川くん』だった。

ー。俺の名前、知ってる?」

一方、芥川くんは私のことを呼び捨てで呼んでくれるようになっていた。

「知ってるけど・・・?」

「じゃあ、言ってみて?俺の名前は・・・?」

「芥川慈郎くん。」

「苗字を無くすとー?」

「・・・慈郎くん。」

「はい、俺のこと呼んでみてー?」

「・・・芥川くん。」

「ちがーう!!」

こうして芥川くんは、何度も私に下の名前で呼ぶように仕掛けた。
・・・だけど、付き合っても、恥ずかしいものは恥ずかしい。それに、『芥川くん』の方が慣れてしまったんだから。

「俺はの何?」

「・・・彼氏。」

「だよね?なのに、なんで友達と同じ呼び方なわけ??俺はにとって、特別じゃないの・・・?」

芥川くんって寝ているイメージの方が大きかったのに・・・。最近はずっと起きてくれている。
それは有り難いことなんだけど・・・。

「特別だけど・・・。」

「俺も特別だから、のことは、って呼ぶんだよ?」

そんな風に責める芥川くんを、ほんの少し怖く感じてしまう。
ううん。私が悪いんだもの。芥川くんを怖がるのは間違っている。

「ねぇ?だから、名前で呼んで?」

そう言った芥川くんは、やっぱり可愛くて・・・。

「テニス部のみんなだって、俺のことは『ジロー』って呼んでるのに、彼女に下の名前を呼ばれないなんて、寂Cんだよ・・・?」

そんな困った顔をしないで・・・!!
これ以上、芥川くんを困らせたくはない・・・。

「じゃあ・・・慈郎くん・・・。」

「ん〜・・・。『くん』は要らないけど。・・・ま、いっか。今は、それで許してあげるっ!」

芥川くんは・・・・・・じゃなくて。慈郎くんは、ニッコリと笑って、そう言ってくれた。
こんな笑顔を見せてくれるなら、もっと早く、そう呼んでもよかったかもしれない。

・・・でも、やっぱり、突然呼び方を変えるのは、恥ずかしいし。

〜・・・。あれから、俺のこと、全然呼ばないじゃん!」

「え〜、そ、そうかなー?気のせいじゃない??」

そうそう気のせいだよ、慈郎くんの気のせい!

「気のせいじゃない!って言うか、も気のせいじゃないと思ってるからこそ、そんなにどもったんでしょ!」

「そんなんじゃないってば!」

そんなんじゃいよ、慈郎くん!
・・・って、心の中で練習中な私。『慈郎くん』、そう言うだけじゃないか、私!!

「俺のこと、好きじゃないの・・・?」

「そんなことない。・・・・・・・・・慈郎くんのこと、大好きだよ?」

「嬉C〜!ありがとう!!」

ふ〜・・・。頑張った、私!!

「でも、いつかは呼び捨てで、呼んでね!」

だけど、慈郎くんはまだ納得していなかったみたい。・・・う〜ん。心の中で、もっと練習するしかないかな?
ジロー、ジロー・・・。それとも、慈郎?なんとなく、慈郎くんにはジローってイメージだよね。
・・・うわ。今、心の中とは言え、何回慈郎くんの名前を呼んだんだろう・・・。あ!今も、1回呼んじゃった!!

ジロー・・・かぁ・・・。

そのことばかり悩んでいた私は、慈郎くんに話し掛けられる度、少し緊張していた。・・・また、指摘されるんじゃないかって。

!」

「・・・どうしたの?」

「今度のゴールデン・ウィークさ、デートしない??」

でも、最近の慈郎くんは、呼び方について言わなくなっていた。それに、今回はデートのお誘いだったみたい。・・・って、デート?!慈郎くんと何処かへ遊びに行くのは、初めてだ・・・。つまり、初デート!!これはこれで緊張の種が増えてしまった・・・。

「無理・・・?」

「ううん!大丈夫だよ。」

「よかった!」

でも、やっぱり楽しみだとも思う。だから、私は笑顔で返した。

そして、迎えたゴールデン・ウィーク。慈郎くんの部活の都合で、5日に遊ぶことになった。こどもの日だから、何処も子供がいっぱいかもしれないなぁ。・・・まぁ、私たちも子供だから、いいよね。
こう言っちゃ失礼だけど、慈郎くんって、子供っぽいとこあるもんねぇ。

「ごめん、!待った?」

「ううん。今、来たとこ。」

「そっか。よかった。」

そんな失礼な考えをしているときに、慈郎くんがやって来た。・・・って、今のやり取り、ベタだよね?でも、本当にそうだったんだもん!・・・あぁ、そんなことを考えると、余計に恥ずかしくなってきた。それに、慈郎くんも私服だし・・・妙に意識しちゃう。

、私服も可愛いね!」

・・・・・・慈郎くんは凄い。よく、そんなこと言えるよね・・・。

「・・・・・・ありがとう。・・・・・・・・・慈郎くんもカッコイイよ。」

「へへ、ありがとう。」

恥ずかしくて、小声でしか言えなかったけど、慈郎くんはちゃんと聞いてくれたみたい。頑張って言った甲斐があったね!

「それで、今日は何処に行くの?」

「その前に。1個言いたいことがあるんだー。」

「ん?」

「実は、今日、俺の誕生日♪」

「そうなのー?!おめでとう!!」

「ありがとー!」

こどもの日が誕生日か・・・。やっぱり、慈郎くんらしい気がする。
それにしても。部活の都合ってこともあったんだろうけど、慈郎くんが自分の誕生日に私と一緒に過ごしてくれることが嬉しい。

「じゃ、何かプレゼント買いに行かなくちゃ!」

「それなんだけど!」

「なあに?」

「俺の言うこと、1つ聞いてほしいんだ。それをプレゼントにして?」

「言うこと・・・?」

「うん!」

「それって・・・。」

「これから、ジローって呼ぶこと!」

やっぱり、そういうことか・・・。
いつもなら、すぐに逃げてしまう私。だけど、今日は慈郎くんの誕生日。そう、特別な日なんだ。
それに、この間、心の中で少し練習したじゃないか!だから、頑張れ、私!!

「・・・・・・・・・。わかった。・・・・・・おめでとう、ジロー。」

「あっりがとぉー!!!!」

「わ・・・!慈郎くん、恥ずかしいって・・・!!」

突然抱きつかれ、また呼び方が戻ってしまった。でも、突然こんなことされたら、仕方がないよ!

「くんは、ダーメ。今日から、ずっとジローだからね!」

「ずっと?!」

「うん。だって、さっき『これから』って言ったでしょ?だから、ずっとだよ。・・・Eでしょ?」

こんなお願いにだって、今まで逃げてきた。だげど・・・。

「わかった。」

「やったー!!本当に?」

「うん、本当だよ。・・・慣れないけど、頑張るね・・・ジロー。」

「マジ嬉C!!」

本当はすごくすごく恥ずかしい。・・・でも、そんなに笑顔で喜ばれちゃあ、私だって頑張ろうと思うよ。だって、慈郎く・・・じゃなかった。だって、私はジローのことが好きだから。大好きな人の笑顔のためなら、恥ずかしいけど、頑張ってみる。
それに。私も、こうやって呼んでもいい、特別な存在なんだって感じられて、嬉しいからね。

「ありがとう、ジロー。」

「なんで?お礼を言いたいのは、こっちだよ!俺の誕生日、一緒に過ごしてくれて、ありがとう。となら、何処に行ったって楽しいけど・・・一応、行きたい所は決めてきたから。行こっ!」

そう言ってくれて、慈・・・、ジローは私の手を掴んだ。
本当は、それだって恥ずかしい。きっと、私の顔は真っ赤だろう。だけど、この状況に幸せを感じてる自分もいる・・・。だから、私も離さないで、ちゃんとジローと手を繋いで歩き始めた。













 

初芥川夢です!いやぁ、正直喋り方がわかりません!!・・・・・・orz
とりあえず、「C」とか「E」とか使えばいいかと思っていましたが・・・意外と使える場所って無いんですよね;;
そんなわけで、完成が遅くなりましたが、誕生日に間に合って良かったです!おめでとうございます、芥川さん!!

この話のきっかけは、いつか見た夢なんですが・・・。かなり前のことなので、夢の内容はほとんど忘れました(笑)。
それも原因で、完成が遅くなりましたね・・・。まぁ、最終的に完成したので良かったです、はい。
そんなわけで、ルフィさん、お誕生日おめでとうございます!(←!?)

('08/05/05)